今後のマンション政策のあり方に関する検討会
令和5年8月10日、国土交通省からの「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」の取りまとめ案が公表されました。
築40年以上を経過した高経年のマンションは、2022年末時点で約125.7万戸存在し、10年後には約2.1倍の約260.8万戸、20年後には約3.5倍の約445万戸と急増していくことが見込まれています。そして、高経年マンションにおいては、区分所有者の高齢化が進むと同時に、空室や賃貸住戸などの非居住化も進み、さらに所在不明住戸が発生しているマンションも存在するようになっています。
検討会では、マンションと居住者の両方における高齢化に対応するため、法制審議会との車の両輪として、マンションの管理・修繕・再生のための施策について総合的に議論が重ねられてきました。
今回の取りまとめは、「マンションの長寿命化」や「修繕積立金の安定確保」「管理不全マンションへの対応」「円滑な建て替え事業等に向けた環境整備」などの幅広いテーマにおいて、現時点で考えられる政策の方向性をとりまとめ、マンション政策全般に係る大綱として位置づけられています。
内容は、
(1)管理・修繕に関する現状と課題、施策の方向性と、(2)建て替え等に関する現状・課題、施策の方向性をまとめたものとなっています。
(1)管理・修繕に関する現状と課題、施策の方向性
管理・修繕を巡る課題では、以下6項目が抽出されています。
①マンションの長寿命化の推進
⇒入居者の同意を必要とする建て替えが現実的に難しい状況を踏まえ、
通常の長期修繕計画よりもさらに長期間の計画の在り方を検討。
②適切な修繕工事などの実施
⇒適切な修繕積立金の引上げ幅、
設計コンサルタントを判別しやすくする仕組み等
③管理不全マンションへの対応
⇒区分所有者名簿等の更新の仕組み、地方公共団体の権限の強化等
④管理組合役員の担い手不足への対応
⇒管理会社が管理者となる形式の外部専門家の活用が増加しつつある中、
実態把握を進め、留意事項等をまとめたガイドラインの整備等を行う
⑤定期借地権マンションの今日的評価
⇒契約期間終了後の具体的な対応等について、
実務上必要とされるノウハウの整理を行う
⑥大規模マンション特有の課題への対応
⇒大規模マンションにおける監査のあり方について、専門家の活用を念頭に検討
(2)建替え等に関する現状・課題、施策の方向性
建替え等を巡る課題では、以下3項目が抽出されています。
①円滑な建て替えに向けた環境整備
⇒建替え後の面積基準の引下げや必要性等について検討、
地方公共団体が行う独自の緩和事例等を収集、横展開を図る。
②多様なニーズに対応した事業手法
⇒非現地に住み替えを行う区分所有者の負担軽減に向けた検討、
隣接地や底地の権利者が建替え事業に参加しやすい方策の検討。
③自主建て替えの円滑化
⇒自主建替えにおける実態把握や金融支援、
専門家活用のあり方に関する検討を踏まえ、マニュアルの整備等を進める。
最後に、今後の対応として、
「今後の施策の方向性」に示した事項のうち、検討方針を明らかにした次の事項については、本年秋頃を目途に、検討会の下にワーキンググループを設置し、施策の具体化に向けた検討を開始するとされています。
そして、管理組合等において管理適正化や再生円滑化に向けた議論を促す観点から、検討会で取り上げた課題や議論経過、とりまとめ内容について広く周知を行っていくということです。
更新日:2024年3月11日