中古戸建住宅の評価に関して
平成27年7月30日、国土交通省にて不動産鑑定評価における
「既存戸建住宅の評価に関する留意点」が公表されました。
日本の中古住宅市場は、建物の性能や維持管理の状態等の情報が不足し、既存住宅の質に対する消費者の不安があることや、築後20~25年程度で戸建住宅の価値が一律にゼロとされるなどの取引慣行等の問題があると言われています。
住宅ローン減税などの税制上の優遇もあって、新築住宅が好まれる一方、空き家は年々増加しており、中古住宅の流通促進は重要な課題となっています。
そういった状況を踏まえて、
不動産鑑定業者が戸建住宅の鑑定評価を行なうに当たっての留意点として、建物の性能やリフォームの状況等を的確に反映して鑑定評価を行うことが通知されました。
留意点の大まかな内容としては、
①住宅性能評価書や長期優良住宅認定通知書、重要事項説明書やインスペクションの調査結果、住宅履歴情報等を活用し、内覧を含めた実施調査等により、建物の性能、維持管理の状態等の建物に関する個別的要因の調査を的確に実施すること、
②個別的要因の調査結果等を原価法の適用に的確に反映するため、建物の構造、規模等を踏まえた適切な再調達原価を把握すること、住宅を構成する部位毎の特性を踏まえ、経済的残存対応年数を適切に把握し、リフォーム等の実施による価格形成への影響を考慮し、評価に適切に反映すること、
が重要であるとしています。
また、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会においては、
「既存戸建住宅建物積算価格査定システム」が作成されており、適切な建物価値判定の精度向上に貢献するシステムの開発も進んでいます。
さらに、翌日の7月31日には公益財団法人不動産流通推進センターにおいて、「既存住宅価格査定マニュアル」の改訂も行われました。
宅地建物取引業者が媒介金額を求める際にも、住宅の性能やリフォームの状況等を適切に反映した査定額の算出がなされるよう期待されています。
以前のトピックスで掲載した空き家対策特別措置法に関する施策を含め、不動産に関する業界全体で、空き家の減少、中古戸建住宅の流通促進、市場の活性化に向けた取組みが進んでいることが伺えます。
今後、戸建住宅の鑑定評価を行う際には、建物の性能やリフォームや修繕の履歴の確認をより詳細に確認することが求められますが、
リフォーム内容が建物の価値として適正に評価されることで、中古住宅市場における建物に関する情報の非対称性が低下し、取引の活性化につながることが期待されます。
更新日:2015年8月24日