平成24年地価公示について
3月23日に、国土交通省から1月1日時点での公示地価が公表されました。
・概況はこちら → http://tochi.mlit.go.jp/chika/kouji/2012/index.html
・平成24年地価公示に基づく動向
全国的な流れと、当社(有)つかさ不動産鑑定事務所の所在する豊島区の
近年の動きについてまとめてみました。
<全国>
平成23年1月以降の1年間の地価動向は、全国平均の変動率で住宅地が△2.3%、商業地が△3.1%、準工業地が△2.4%となるなど、全国平均で4年連続の下落になりましたが、下落率は縮小しています。
半年毎の地価動向を都道府県地価調査との共通の調査地点でみると、東日本大震災のあった平成23年前半(1~6月)に下落率が拡大し、後半(7~12月)に下落率が縮小しています。大震災の影響により、不動産市場は一時的に停滞したものの、被災地を除き、全国的には早期の回復傾向が見られるようです。一方で、円高、欧州債務危機等の先行き不透明感による地価への影響も懸念が残ります。
住宅地では、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要が下支えとなって、下落率は縮小しました。人口の増加した地域で下落率の小さい傾向が見られ、また、住環境良好あるいは交通利便性の高い地点で地価の回復が目立っています。
圏域別にみると、東京圏は、前半は他の圏域に比べ下落率が拡大しましたが、後半は他の圏域を上回る回復を示した。大阪圏は、前半、後半を通じて下落率が縮小しており、上昇地点も兵庫県を中心として増加した。名古屋圏は、年前半に下落率が拡大したが、年後半は圏域として横ばいとなりました。地方圏は、前年より下落率が縮小し、上昇地点が増加しました。
商業地では、前年より下落率が縮小しましたが、オフィス系は高い空室率・賃料下落、店舗系は商況の不振から、商業地への需要は弱いものとなっています。その中にあって、主要都市の中心部において、賃料調整(値下げ)が進んだこともあって、耐震性に優れる新築・大規模オフィスへ業務機能を集約させる動きが見られ、これら地点の後半の地価は下げ止まっています。また、三大都市圏と一部の地方圏においては、J-REITによる積極的な不動産取得が見られました。その他、堅調な住宅需要を背景に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られました。
圏域別にみると、東京圏は、前半に他の圏域に比べ下落率が拡大しましたが、後半は他の圏域を上回る回復を示しました。大阪圏は、前半、後半を通じて下落率が縮小しています。名古屋圏は、前半に下落率が僅かに拡大しましたたが、後半は圏域としてほぼ横ばいとなっています。地方圏は、前年より下落率が縮小しました。
次に、震災で被害の大きかった東北3県の変動率を見てみると、
宮城県 住宅地△0.7%(△2.9%)、商業地△3.9%(△6.5%)
岩手県 住宅地△4.8%(△4.9%)、商業地△7.0%(△7.6%)
福島県 住宅地△6.2%(△3.4%)、商業地△7.2%(△4.3%)
となっており、
宮城県、岩手県では下落率が縮小しているのに対し、福島県では下落率は拡大を示しています。
津波による甚大な被害を受けた地域や、原発事故にともなう警戒区域等では調査は行われていないものの、結果をみると原発事故の影響の大きさが伺えます。
逆に、宮城県では浸水を免れた高台の住宅地に対する移転需要が高まったことで、地価の上昇地点も見られたようです。
下図は、東京23区の住宅地と商業地について、地価公示地点ごとの変動率の平均を示したものです。
東京23区の平均変動率(住宅地) | 東京23区の平均変動率(商業地) | ||||||
2011年 | 2012年 | 2011年 | 2012年 | ||||
中央区 | 3.5 | 練馬区 | △ 0.6 | 杉並区 | △ 0.5 | 足立区 | △ 0.1 |
杉並区 | △ 0.2 | 中央区 | △ 0.7 | 練馬区 | △ 0.8 | 葛飾区 | △ 0.5 |
千代田区 | △ 0.4 | 中野区 | △ 0.7 | 葛飾区 | △ 1.2 | 杉並区 | △ 0.8 |
練馬区 | △ 0.7 | 杉並区 | △ 0.7 | 墨田区 | △ 1.3 | 北区 | △ 0.9 |
江戸川区 | △ 0.7 | 北区 | △ 0.7 | 豊島区 | △ 1.4 | 練馬区 | △ 0.9 |
葛飾区 | △ 0.8 | 葛飾区 | △ 0.7 | 中野区 | △ 1.5 | 墨田区 | △ 1.0 |
中野区 | △ 0.9 | 品川区 | △ 0.8 | 江戸川区 | △ 1.7 | 荒川区 | △ 1.1 |
江東区 | △ 1.1 | 足立区 | △ 0.8 | 足立区 | △ 2.0 | 大田区 | △ 1.4 |
新宿区 | △ 1.1 | 港区 | △ 0.9 | 江東区 | △ 2.0 | 品川区 | △ 1.5 |
墨田区 | △ 1.4 | 新宿区 | △ 0.9 | 板橋区 | △ 2.0 | 目黒区 | △ 1.6 |
世田谷区 | △ 1.4 | 千代田区 | △ 1.0 | 品川区 | △ 2.1 | 世田谷区 | △ 1.7 |
品川区 | △ 1.4 | 目黒区 | △ 1.0 | 荒川区 | △ 2.4 | 板橋区 | △ 1.7 |
目黒区 | △ 1.5 | 大田区 | △ 1.0 | 北区 | △ 2.4 | 文京区 | △ 1.9 |
板橋区 | △ 1.6 | 荒川区 | △ 1.0 | 目黒区 | △ 2.7 | 江戸川区 | △ 1.9 |
渋谷区 | △ 1.6 | 文京区 | △ 1.2 | 大田区 | △ 2.8 | 新宿区 | △ 2.0 |
北区 | △ 1.7 | 世田谷区 | △ 1.3 | 新宿区 | △ 3.2 | 江東区 | △ 2.1 |
豊島区 | △ 1.7 | 豊島区 | △ 1.3 | 世田谷区 | △ 3.5 | 中野区 | △ 2.1 |
大田区 | △ 1.9 | 板橋区 | △ 1.3 | 台東区 | △ 3.6 | 豊島区 | △ 2.1 |
港区 | △ 2.0 | 江戸川区 | △ 1.4 | 千代田区 | △ 3.6 | 中央区 | △ 2.8 |
荒川区 | △ 2.5 | 江東区 | △ 1.5 | 中央区 | △ 3.8 | 千代田区 | △ 2.9 |
足立区 | △ 2.9 | 渋谷区 | △ 1.5 | 文京区 | △ 3.9 | 台東区 | △ 2.9 |
文京区 | △ 2.9 | 台東区 | △ 1.6 | 港区 | △ 5.0 | 渋谷区 | △ 3.4 |
台東区 | △ 2.9 | 墨田区 | △ 1.9 | 渋谷区 | △ 6.1 | 港区 | △ 3.6 |
平均 | △ 1.3 | 平均 | △ 1.0 | 平均 | △ 3.0 | 平均 | △ 2.1 |
都心部 | △ 1.5 | 都心部 | △ 1.1 | 都心部 | △ 3.9 | 都心部 | △ 2.8 |
南西部 | △ 1.0 | 南西部 | △ 0.9 | 南西部 | △ 2.1 | 南西部 | △ 1.5 |
北東部 | △ 1.6 | 北東部 | △ 1.1 | 北東部 | △ 1.9 | 北東部 | △ 1.1 |
都心部・・・千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区の8区 | |||||||
南西部・・・品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区の7区 | |||||||
北東部・・・墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区の8区 |
東京23区の住宅地を見ると、全区で下落を示したものの、平均下落率は△1.0%で、前年に比べ、やや下落率は縮小しました。
区ごとの変動率を見ると、23区のうち、17区で下落率が縮小、5区で下落率が拡大、昨年、23区唯一の上昇を見せた中央区では、上昇から下落に転じました。
個別地点でみても、住宅地で上昇した地点はありませんでした。
豊島区の下落率は昨年に比べて縮小しましたが、23区内では比較的大きい下落幅となりました。
東京23区の商業地を見ると、住宅地と同様、全ての区で下落しており、平均下落率は△2.1%です。こちらも前年に比べ、下落率は縮小しました。
区ごとの変動率を見ると。23区のうち、17区で下落率が縮小、6区で下落率が拡大しています。昨年同様、都心部の区が下落率の上位を占めています。
個別地点でみると、8地点で価格の上昇が見られました(足立区4地点、墨田区2地点、新宿区1地点、北区1地点)。
豊島区の下落率は拡大しており、23区内で見ても、住宅地と同様に比較的大きい値となりました。
<豊島区>
下図は2003年から過去10年間にわたる豊島区の住宅地の公示地価について、
平均価格及び変動率の推移を示したものです。
一貫して下がり続けてきた地価は、2006年を底に高い上昇率を示していましたが、2009年に再び下落に転じています。
住宅地の地価平均価格は458千円/㎡で、平均変動率は△1.3%となりました。
住宅地は全23地点のうち、昨年比較的下落幅の小さかった3地点で下落率の拡大が見られましたが、他の地点では縮小或いは横ばいとなっています。
下落率が最も小さい地点で△0.7%、最も大きい地点でも△1.9%に留まっています。
住宅地の最高価格地点は引き続き目白4丁目で、前年比△0.9%の630千円/㎡となりました。
商業地の地価平均価格は1,412千円/㎡となり、平均変動率は△2.1%となりました。
商業地においても全ての地点が引き続き下落しました。
継続地点の全29地点のうち下落率が縮小、或いは横ばいに留まったのは9地点のみであり、他の20地点では、下落率が拡大しています。
とくに、昨年下落率が大きく縮小した池袋駅周辺の商業性の高い地点で、下落率の拡大が目立っています。
下落率が最も小さい地点で△0.3%、最も大きい地点で△4.0%となりました。
商業地の最高価格地点は引き続き東池袋1丁目で、前年比△0.4%の7,960千円/㎡となりました。
更新日:2012年7月4日